北京旅行の記録 1 ― 頤和園

2012年12月から2013年1月にかけて北京に調査旅行に行った際の記録です。

北京は、ご存知の通り中国の首都ですが、万里の長城、故宮、頤和園等、著名で見どころの多い観光名所が市内に何ヶ所もあるほか、近年では、郊外に現代アートギャラリーの集積地等も生まれつつあり、遺跡・美術スポット等めぐりをする上で、目が離せない都市のひとつとなっています。

私は、7泊8日の日程で、北京市中心部のホテルに滞在しながら、市内・郊外の世界遺産、名所、美術館、ギャラリーを見学しました。

1日目

北京到着。王府井近くのホテルに宿泊。

2日目

頤和園

地下鉄で頤和園(世界遺産)へ。
頤和園は、清代に築かれた皇室庭園です。

地下鉄4号線の北宮門駅で降り、裏門(北宮門)から頤和園に入園しました。

※私は通常と逆順序で観光してしまったのですが、以下では頤和園の全体像が分かりやすいように適宜順番を変えて写真を掲載しています。

頤和園の主要部の遠景。
頤和園

奥の小高い山(万寿山)に見える、八角形(この写真だと六角形位に見えますが)で三層の建物は、仏香閣(ぶっこうかく)という名前で、頤和園を代表する建物です。

また手前の湖は、昆明湖と呼ばれ、頤和園の敷地の4分の3を占める大きな湖です。
普段の季節は青々とした水を湛えている湖らしいですが、私が訪問した時期は寒さで水が凍結し、湖面の上が歩ける状態となっていました。

排雲殿(はいうんでん)。仏香閣(奥に一部が写っている)の手前にある建物で、頤和園の正殿。
頤和園 排雲殿

排雲門(はいうんもん)。排雲殿のさらに手前に位置する門です。
頤和園 排雲門

万寿山を登り、間近から仏香閣を見た様子。
頤和園 仏香閣

正門(東宮門)付近の宮殿区域と万寿山の区域を結ぶ、長廊(ちょうろう)と呼ばれる長い回廊。
頤和園 長廊

ここからは、正門付近の宮殿区域の建築物です。

皇帝(光緒帝)や西太后が頤和園に滞在した際に執務を取ったという、仁寿殿(じんじゅでん)という宮殿。
頤和園 仁寿殿

宮殿区域の南端、昆明湖の岸辺にある城門、文昌閣(ぶんしょうかく)。
頤和園 文昌閣

頤和園の正門、東宮門(とうぐうもん)。
頤和園 東宮門

見学した感想として、頤和園内の個々の建築に関して言えば、仏香閣、文昌閣等の一部の建物が規模的に大きいことを除けば、各建物ともやや様式化した造形が目立ち、非常に見どころがあるという印象ではありませんでした。

ただし、園自体は、広大な敷地の庭園で、湖、山、塔、回廊、宮殿等様々な要素が構成する風景が、各場所ごとに風情があったり、珍しかったりで、歩いていて名所感を味わえる庭園でした。

北京の観光地では、万里の長城と故宮が名所の筆頭と言えるかと思いますが、頤和園もそれらに次いで訪れる価値がある場所と思いました。

北京の故宮博物院に大規模な分院の建設計画が進行中

北京の故宮博物院に大規模な分院の建設計画が進行中とのことです。

10日付の中国紙、京華時報は、北京市中心部にある故宮博物院が手狭となり、収蔵品の保管や修復に支障が出ているため、市内の別の場所に敷地47万平方メートルの分院を建設する計画が進んでいると伝えた。展覧部分が5万平方メートルを超える大規模博物館で、年に少なくとも300万人の観客を見込んでいる。 msn産経ニュース

私は昨冬旅行で北京の故宮を訪れ、宮殿建築の他に、陶磁器の展示館(陶瓷館)、工芸品類を展示した珍宝館等で美術品を見学しましたが、それらの展示館はいずれも清代の宮殿建築を利用したもので、決して近代的な展示設備とは言いがたいものでした。

・故宮の文華殿(陶瓷館)

故宮 文華殿

また、故宮は93万4000点という膨大な所蔵品を所有していますが、その所蔵品数と比べ、確かに面積、拡張性等の面で大きく能力が不足している印象もありました。

引き続き、今までのように故宮の伝統ある建物で美術品を鑑賞できる機会もあると良いと思いますが、それと並行して、近代的で大規模な展示室と、記事にあるような修復施設や、保存、研究等の施設を備えた博物館を準備することは必須だっただろうと思います。

新しい博物館は、展示部分が5万平方メートルとのことですが、これは、完成すれば日本の国立博物館4館(東京、京都、奈良、九州)の展示面積の計約3万平方メートルをはるかに超える規模で、少なくとも面積上ではイギリスの大英博物館(5万7000平方メートル)、フランスのルーブル美術館(展示面積6万1000平方メートル)等に匹敵する(参考)、世界トップクラスの規模の博物館となりそうです。

分館が完成すれば、今は展示スペースの制限で十分に公開できていない美術品、文化財等も多く常時展示され、北京を訪れた際には見逃せない博物館の一つとなるかと思います。

「上海博物館 中国絵画の至宝」を鑑賞しました

東京国立博物館で開催中の「上海博物館 中国絵画の至宝」を鑑賞しました。

「上海博物館 中国絵画の至宝」は、中国の上海博物館が所蔵する中国絵画コレクションから、五代十国、宋代から清代までの40点を借り受け展示する展覧会で、出品作品には中国の一級文物(日本でいう「国宝」のような存在)18点が含まれます。

上海博物館 中国絵画の至宝

展示作品は、2013年10月1日(火)から11月24日(日)までの会期中、前期(10月27日(日)まで)と、後期(10月29日(火))で半数程度展示替えが行われます。
※今回私は、前期分合計27点(うち一級文物12点)を鑑賞しました。

展覧会の展示構成は、五代十国時代から清代までを5章に分けた以下の通りです。

第1章 五代・北宋―中国山水画の完成―
第2章 南宋―詩情と雅致―
第3章 元―文人画の精華―
第4章 明―浙派と呉派―
第5章 明末清初―正統と異端―

出品点数の内訳は、五代・北宋が3点、南宋が6点、元が10点、明が10点、明末清初が10点となっています。

ただし、全体の出品点数自体が多くないことに加え、第1章から第3章の作品は全点展示替え対象になっている(従って同時に展示されている点数は上記の半数)ため、展覧会場(東洋館第8室)内は、第1章から第3章の作品と、第4章・第5章の作品とで大まかに2区画に分かれているといった印象でした。

出品作品リストは以下の通りです。(公式ページより)

第1章 五代・北宋―中国山水画の完成―
No. 指定 作品名称 作者 時代・世紀 備考
1 一級文物 閘口盤車図巻 五代時代・10世紀 前期
2 一級文物 幽谷図軸 郭熙 北宋時代・11世紀 後期
3 渓山図巻 南宋時代・13世紀 後期
4 一級文物 煙江畳嶂図巻 王詵 北宋時代・11-12世紀 前期
第2章 南宋―詩情と雅致―
5 一級文物 人物故事図巻 南宋時代・12世紀 後期
6 一級文物 楼台夜月図頁 馬麟 南宋時代・13世紀 前期
7 晩景図軸 南宋時代・13世紀 前期
8 西湖図巻 南宋時代・13世紀 後期
9 虞美人図頁 南宋時代・13世紀 後期
第3章 元―文人画の精華―
10 一級文物 浮玉山居図巻 銭選 元時代・13世紀 前期
11 一級文物 枯木竹石図軸 李士行 元時代・14世紀 前期
12 一級文物 墨梅図軸 王冕 元時代・14世紀 前期
13 一級文物 竹石集禽図軸 王淵 元時代・至正4年(1344) 後期
14 一級文物 九歌図巻 張渥 元時代・14世紀 後期
15 一級文物 玄門十子図巻 華祖立 元時代・14世紀 前期
16 一級文物 漁荘秋霽図軸 倪瓚 元時代・至正15年(1355) 前期
17 一級文物 青卞隠居図軸 王蒙 元時代・至正26年(1366) 後期
18 一級文物 秋舸清嘯図軸 盛懋 元時代・14世紀 後期
19 滕王閣図頁 夏永 元時代・14世紀 前期
20 瀟湘八景図巻 張遠 元時代・14世紀 後期
第4章 明―浙派と呉派―
21 一級文物 琴高乗鯉図軸 李在 明時代・15世紀
22 黄鶴楼図軸 安正文 明時代・16世紀
23 寒香幽鳥図軸 呂紀 明時代・15世紀 前期
24 秋江帰漁図軸 呉偉 明時代・15-16世紀 後期
25 有竹隣居図巻 沈周 明時代・15-16世紀
26 一級文物 石湖清勝図巻 文徵明 明時代・嘉靖11年(1532)
27 春山游蹤図軸 周臣 明時代・16世紀
28 春游女几山図軸 唐寅 明時代・16世紀
29 剣閣図軸 仇英 明時代・16世紀
30 花卉図冊(12開) 陳淳 明時代・16世紀 前期・後期で6開ずつ展示
第5章 明末清初―正統と異端―
31 牡丹蕉石図軸 徐渭 明時代・16世紀
32 山陰道上図巻 呉彬 明時代・万暦36年(1608)
33 疎樹遙岑図軸 董其昌 明時代・16~17世紀 前期
34 秋壑高隠図軸 藍瑛 明時代・永暦2年(1648) 前期
35 伏生授経図軸 崔子忠 明時代・17世紀
36 花鳥図冊(10開) 朱耷 清時代・康煕44年(1705) 前期・後期で5開ずつ展示
37 奇峰秋雲図軸 龔賢 清時代・17世紀 後期
38 一級文物 細雨虬松図軸 石濤 清時代・康煕26年(1687)
39 嵩山草堂図軸 王翬 清時代・康煕33年(1694) 後期
40 一級文物 花卉図冊(8開) 惲寿平 清時代・康煕24年(1685)

展示全体を通して優れた作品が多かった印象ですが、個人的に特に見どころと思った作品は以下です。

五代・北宋の作品では、「閘口盤車図巻」、「煙江畳嶂図巻」(王詵筆)の2点が展示されており、両作品とも秀逸な作品でした。
「閘口盤車図巻」では、水門で粉を引く人々や船や牛車で物資を運ぶ人々等、当時の都市の人々の労働の様子と日常が細密な筆致で、かつ活き活きと描写されています。
王詵の山水画「煙江畳嶂図巻」は、特に左半分の山水部分の造形の構成と、卓越した濃淡の使い方等が見逃せません。

南宋の作品では、「楼台夜月図頁」(馬麟筆)が、小振りな作品ですが優品と思いました。月に照らされる楼閣と遠くの山並みが、南宋絵画らしい優美な筆致で描き出されています。

元代の作品では、倪瓚の代表作の「漁荘秋霽図軸」(倪瓚筆)、「浮玉山居図巻」(銭選筆)等が特に描写力に優れているように思いました。

・漁荘秋霽図軸(倪瓚)

漁荘秋霽図軸_倪瓚

明代の作品では、細密で安定した筆致と落ち着いた彩色で蘇州の湖を描き出した「石湖清勝図巻」(文徵明筆)が秀作だった他、多種多様な筆法を使い奇想の山水風景を描き出した長大な絵巻「山陰道上図巻」(呉彬筆)が圧巻でした。

・山陰道上図巻(呉彬)

山陰道上図巻 呉彬

絹本や紙本に描かれた、中国絵画や日本絵画のような絵画は、一般公開することによる作品へのダメージが大きくて常時公開が行えないため、今回展示されている作品も、現地(上海博物館)へ行っても中々見る機会がない作品です。

今回鑑賞した前期(または通期展示)の作品も良かったですが、後期の「青卞隠居図軸」(王蒙筆)等も見てみたい気がするので、私自身は、時間が許せば後期にもう一度鑑賞に行ってもよいかと思っています。

公式サイト: 特別展「上海博物館 中国絵画の至宝」 – 東京国立博物館